石田まさひろ政策研究会

 

「平均在院日数」の怪

日本の平均在院日数は世界各国と比べて長いと言われる。その時に使われるのがOECDが毎年まとめている「OECD Health Statistics」。ところがこれに疑義が生じている。

出典:https://www.oecd.org/health/health-systems/Health-at-a-Glance-2021-How-does-Japan-compare.pdf

 

この平均在院日数の算出は各国それぞれのやり方でやっているが、基本的には退院した患者が何日間入院していたかをしらべ、それを平均している。当たり前だ。

 

ところが、日本だけは違う。厚生労働省の資料をしらべ、OECDに提出している平均在院日数の算出式をみてみると、

だった。

 

この式、入院患者は年(月)によってそんなに変動することがないから、この分子の数字はだいたい一定と考えてよい。

 

したがって、この式の値は(分子が一定なので)分母が大きくなるにしたがって、その分小さくなる。つまり平均在院日数が短いということは、入退院患者が多いということだ。

 

これは、おかしくないか?

 

一人一人の患者がそれぞれ何日入院していたかの平均が、「平均在院日数」という日本語の意味なのだが、この式は日本語と明らかに違う数値を求めている。

 

この式は「病床回転率」を求める式だ。

 

日本は、平均在院日数ではない数値を、堂々とOECDに対し「これが我が国の平均在院日数です!」といっているのだ。エビデンスに基づき医療政策をすすめると言いながら、その根本が間違っていては、日本は世界に顔向けできない。

この奇妙な表現は、医療現場でも使われている。診療報酬の入院基本料の算定の際に「平均在院日数」が基準として使われている。この平均在院日数も、上記と同じ計算方法で算出する。

 

過去この平均在院日数は、診療報酬改定のたびに短縮するよう政策誘導されてきた。政府の方針についていこうと病院は必至に努力しながら平均在院日数を短縮してきた。

 

しかし、その算定式が病床回転率を算出する式だったのだから、実は病院は、平均在院日数の短縮ではなく、病床回転率を高めることにエネルギーをかけてきたことになる。

 

平均在院日数を短くしたければ、日本語通りなら長期入院患者さんが早く退院する努力をするほうが効果的だ。これは患者さんにとっても幸せだ。しかし文字通りではない平均在院日数=病床回転率を高めるという算定式にあわせるなら、退院が困難な長期入院患者の退院のために必死で努力するより、検査入院をたくさん受け入れたほうが手っ取り早く結果を得られる。もしくは患者さんがどんな状況であろうが早く退院してくれる方が結果を得られる。

 

現場の看護師たちは、充分治っていない患者さんに退院を促すのが辛いとよく話すが、これは平均在院日数=病床回転率の短縮政策が現場に強いてきたことだ。

 

厚生労働省の資料を再度みると

とは書いていない

だ。よ~く見てほしい。「 = 」がない。

 

平均在院日数を求める式が、平均在院日数ではないことを理解して使ってきたのではないか。

 

日本語を正しく使わないで、エビデンスに基づく政策などできるわけない。

 

 

 

 

 

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