石田まさひろ政策研究会

 

アメリカ大統領選挙

アメリカ国民の中に変化が起きています。昨年から続く大統領選の報道で皆さんも感じていらっしゃるでしょう。この変化は一時的なものなのでしょうか。それとも地殻変動のようにアメリカを揺るがす大きなものなのでしょうか。

今回の共和党大統領候補選びで特徴的なことは、何と言ってもトランプ氏の大躍進です。ジェブ・ブッシュ氏等本命が次々脱落する中、当初泡沫候補とみなされていたトランプ氏が支持を広げついには指名獲得に至るという結果になりました。

トランプ氏と言えば、その極端な主張と演説振りが印象的です。「アメリカとメキシコの間に長く大きな壁を作る」、「アメリカにいるメキシコ人の大半は犯罪者だ」等、発言だけを取り出すと一笑に付されるような内容なのですが、アメリカ人の中にある鬱屈したものを掬い上げ、それが受けているのは事実でしょう。問題は、この感情が一時の激情なのか、国民に通底する共同意志なのかということです。

8月訪米時、「ヘリテージ財団」(ワシントン)というシンクタンクでスピーチする機会を得ました。共和党系のシンクタンクで、最も影響力のある研究機関の一つに数えられています。スピーチを終えディスカッションが始まると、私は彼らに冒頭の疑問を投げかけてみました。「トランプ氏は、今のアメリカにおいて特別な人(変わった人)なのですか? それとも、トランプ的なる考え方がアメリカ人全体に広がっているのでしょうか。もし穏健なトランプが現れたら多くのアメリカ人が賛同するという可能性はありますか?」と。

その問いに対するヘリテージ財団上級研究員の回答は、まさに共和党の苦汁を表すものでした。曰く、「ヘリテージは特定の政治家の評価はしない。だからどちらの候補者についてもコメントは控える。その代り誰が大統領になっても、アメリカの将来に対してコメントをするのだ。ヘリテージは、大統領や国会議員を教育してきたと言ってよい」つまり、トランプこそわが共和党の候補者だと胸を張って言えなかったということです。

この時の発言通り、共和党はトランプ陣営に主流派を送り込み「教育」を行っているようです。8月18日ノースカロライナ州での演説においてトランプ氏は、「議論が白熱すると正しい言葉を使わなかったり間違ったことを言ったりするものだ」とし、以前の過激な発言を「後悔している」と述べました。「教育」が奏功したのか、本日9月8日CNN世論調査では、有権者の支持率はトランプ氏が2ポイントの差でわずかにクリントン氏をリードしています。とは言え、アメリカ大統領選は有権者の直接投票ではなく州ごとの選挙人獲得数によるものですから現在の趨勢でトランプ大統領誕生の現実性は著しく低いのですが、国民の間にトランプ的なるものへの期待が高まっているのは事実です。例えば4年後、物腰の洗練された「穏健なトランプ」が現れたとき、熱狂的な支持をもって受け入れられるかもしれません。

アメリカの深部で起こっている地殻変動の正体、それは孤立主義(モンロー主義)への回帰やエスニック層の勢力拡大、ミレニアル世代の台頭ということだけで捉えきれない何かであり、新大統領の下で政策に反映されていくことと思います。私たちは、あらゆる「想定外」を想定しながら、国家戦略、外交戦略を組み立てていく必要があると思っています。

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