3月に合格発表があった介護福祉士国家試験の合格者が大きく減りました。
昨年の国家試験では、152,573人が受験し、合格者は88,300人(合格率57.9%)
今年の国家試験では、76,323人しか受験せず、合格者は55,031人(合格率72.1%)
受験者は半減し、合格者数は大きく減りました。
介護人材の不足が大きな課題の中で、この状況は気になります。実は今年から介護福祉士の資格取得の方法が変わったのが大きな原因です。
さて、介護福祉士になるための、今までのルートは3通りあります。
①実務経験を3年以上経て国家試験に合格する
②養成施設で2年以上学び卒業する
③福祉系高校で3年以上学び国家試験に合格する
このうち①で資格を取得する人が大半で平成28年度は約8.8万人。
②は0.9万人、③は0.3万人でした。
今年からの見直しは①で、国家試験を受ける前に、経験3年に加え、実務者研修を6か月以上450時間以上受けることが必要になりました。
(ちなみに②も来年度から徐々に国家試験受験が義務化されます)
この研修を終えるのが大変ということで、今回の受験者が半減しました。
制度の見直しですが、平成19年に法改正されたのですが、何度か施行を延期しました。
長い時間をかけて調整しました。しかしこのような結果になってしまいました。
①の実務経験ルートで研修をするというのは、社会人が研修を受けるということで、本人の努力のみならず、職場の理解や支援がとても重要になってきます。
しかし現場の実態は、研修に行きたくても人手不足のため職場を抜けることができないなどの事情があります。研修の大半は通信教育でできるのですが、それでも働きながら勉強するのは簡単なことではありません。
一方、介護福祉士の資格を取らなくてもホームヘルパーの資格でも無資格でも、現場で働き続けることは可能なので、動機もあがりにくい状況もあります。
研修を受けやすくするための支援をもっと強化しなければなりません。
今回の仕組みの変更は、介護の質の向上が目的です。
利用者のニーズがどんどん高まり、多様化高度化も進んでいます。一人でも多くの方に介護福祉士の資格をとってもらい、さらに研鑽してもらい、より質の高い介護を提供することはとても大切です。
またその結果が処遇の改善にもつながります。
しかし一方で現場の人員が不足して研修を受けることが簡単ではない。
量を求めれば質が上がらず、質を求めれば量が足りず…量と質を同時に目指すのは大変です。しかし、これを乗り越えなければなりません。
複合的な政策がどうしても必要なこの分野、歯を食いしばって、前進していかねばなりません。