石田まさひろ政策研究会

 

第201回国会 参議院本会議 【令和2年4月3日】

第201回国会 本会議 第11号 

令和二年四月三日(金曜日) 午前十時一分開議

○議事日程

第一 国務大臣の報告に関する件(新型インフルエンザ等対策特別措置法第十五条に定める政府対策本部の設置等及び二〇二〇年東京オリンピック競技大会・東京パラリンピック競技大会の延期に関する報告について)


○石田昌宏君

自由民主党の石田昌宏です。  私は、自由民主党・国民の声を代表して、ただいま議題となりました政府報告について安倍総理に質問いたします。

伝統ある本会議場の演台ではありますが、目の前にマイクや速記者の方々がいらっしゃいますので、感染防止の観点から、マスクをしたまま大きくない声で発言いたします。

冒頭、この度の新型コロナウイルス感染症によってお亡くなりになった方々に心からお悔やみ申し上げるとともに、感染症と闘病中の方々へのお見舞いと、自粛などで生活の苦労を感じながらも感染症にきちんと向き合ってくださっている全ての方々に感謝の意を表します。

有史以来、常に人類は感染症に向き合ってきました。一国の人口を半減させたペスト、今なお猛威を振るうマラリア、最近現れたSARSやMERS。これらに対し、人類は、治療法やワクチンの開発など、科学技術の発展、また公衆衛生の向上などをもって一部は克服し、一部は共存するようになりました。新型コロナウイルスも収束する経過を必ずたどるはずです。

歴史を振り返ると、感染症に最も有効だった人類の知恵は、実は単純な行動でした。細菌やウイルスを体内に入れないための手洗いやうがい、細菌やウイルスに接触しないための密閉、密集、密接をしない、いわゆる三密です。世界的に見て、日本で新型コロナウイルス感染症の広がりが抑えられている一番の理由は、都市封鎖をしなくても、基本に忠実に行動している人が多いからです。つまり、国民一人一人の適切な行動を支えることこそが、感染症克服の一番の鍵だと思います。

しかし、これだけやっても、都心を中心に感染症が更に増えてきました。四月一日、政府の新型コロナウイルス専門家会議は、より強い行動の徹底を国民に求めました。くじけることなく、緩むことなく、なお一層、的確な行動を深めるには、必要とあらば緊急事態宣言を出すことも視野に、政府対策本部のもう一段強いリーダーシップが必要です。  本部長たる総理は、国民一人一人が不安なく的確な行動を取れるよう、現状はどうなのか、どのような行動を求めるのか、どういう支援があるのか、そして、その先には安心があるんだ、そういった納得感ある言葉をここで伝えていただけないでしょうか。

次に、ウイルスとじかに向き合い、国民の命を守っている医療について伺います。感染症克服のために長く貢献してきた日本赤十字社が、三つの感染症と称して、未知のウイルスによってもたらされる負の連鎖、すなわち、疾病が不安や恐れを引き起こし、嫌悪、差別、偏見を生む、この危険性を警告しています。実際、感染症の患者の治療をした病院のスタッフの子供が保育園に通うことを拒否され、スタッフが休暇を取ったため、人手不足で閉鎖を余儀なくされた病棟があります。既に三つの負の連鎖が起きています。  そこで、政府は、この負の連鎖からどのように医療を守っていくのか、最前線の医療従事者にしっかり伝わるよう、お聞かせください。

四月一日、専門家会議は、オーバーシュートが起こる前に医療供給体制の限度を超える負担が掛かり、医療現場が機能不全に陥ると予測しました。ともかく、病床や療養の場の整備を至急求めます。しかし、我が国は、欧米と比べ病床当たりの看護職員数や医師の数が半分以下しか配置されていません。実は、医療従事者のぎりぎりの誠意に制度が依存してきたのが日本の医療の現実です。

物品についても、マスクや消毒薬だけでなく、治療に必要なガウンや手袋など感染防護物品も、人工呼吸器も、感染症に対応できる病床も不足しています。現場は既に危機感にあふれています。医療従事者や衛生物品の確保、医療提供体制の確保は既に緊急事態です。政府の大胆な行動を求めたく、御所見を伺います。

経済への影響についてお尋ねします。IMFもリーマン・ショック以上の経済収縮の見方を示しています。感染抑制のためには、どうしても経済活動の自粛をお願いせざるを得ません。しかし、どんなに経済が収縮しても、経済産業の基盤だけは崩さない、すなわち、企業や事業者が事業縮小や倒産、閉店に追い込まれないこと、また、新規採用や雇用を守り、生活をしっかり支えていくことができれば、感染収束後の経済のV字回復が可能です。

また、同時に、今回露呈した感染症に弱い社会構造を遠隔医療やテレワーク、遠隔教育などで一気に改革すべきです。  米国では、GDPの一割に相当する二兆ドル規模の対策を打ち出します。EUも、財政赤字の抑制ルールを停止します。我が国も、GDPが縮小した分を完全に埋め合わすまで、何度でも何度でも前例にない完全な財政出動、そして斬新な給付等、あらゆる施策を講じるべきです。あわせて、新たな技術による未来をつくる基盤を構築すべきです。総理の決意をお聞かせください。

サプライチェーンの偏在について伺います。我が国の製造業は、中国に主要部品の生産工場を置いている企業が多く、早い段階から大きな影響を受けました。象徴的なのは、八割を海外生産に依存していたマスクの不足です。衛生物品や薬剤など、不足は国民の健康、命に大きな影響を与えます。労働力の安さなどのメリットから海外への生産拠点の移転が進みましたが、安全保障的側面から経済や保健衛生を考えると、これまでの生産や物流の在り方が適切だったのか検証しなければなりません。  我が国への生産回帰や生産拠点の複数国への分散化など、サプライチェーンの在り方を改革しなければなりません。御見解をお聞かせください。

東京オリンピック・パラリンピックの延期について伺います。今回の大会の延期は評価されるべき判断です。延期に伴う課題の克服はもちろん必要ですが、さらに、来年の大会は単なる四年に一度の大会ではなく、全世界が感染症を克服し、感染症により切り離された世界を再結集させる、言わば新しい世界を生み出す大会です。完全な形で開催できるよう、あらゆる手だてを講じていかなければなりません。

最後に、新たなオリンピック・パラリンピックへの総理のお考えをお伺いして、私の質問を終わります。 ありがとうございました。(拍手)


○内閣総理大臣(安倍晋三君)

石田昌宏議員にお答えいたします。

新型コロナウイルス感染症に関する現状等についてお尋ねがありました。現在の国内の感染状況に関しては、東京を始めとして都市部を中心に感染者数が急増し、感染経路が不明な感染者も増加しており、海外からの移入が疑われる事例も多数報告されているものと承知しています。緊急事態宣言との関係では、現時点ではまだ全国的かつ急速な蔓延という状況には至っておらず、ぎりぎり持ちこたえている状況にあり、少しでも気を緩めればいつ拡大してもおかしくない、まさに瀬戸際が継続している状況にあると考えておりますが、必要な状況になれば、ちゅうちょなく緊急事態宣言を行う所存です。

現在、国民の皆様には大変御不便をお掛けしておりますが、これは、欧米各国がそうであるように、都市の封鎖や強制的な外出禁止、生活必需品以外の店舗封鎖など、強硬な措置を回避するためのものです。国民の皆様には、この三点を御理解いただきつつ、引き続き、いわゆる三つの密を避ける行動の徹底など、感染拡大防止に向けた御協力を改めてお願いしたいと思います。

また、経済も甚大な影響を受けております。事業者の皆様の経営や国民の皆様の暮らしにも大変な打撃となっております。そのため、この難局を乗り切っていただくことに重点を置いて、あらゆる手段を尽くして徹底的に下支えし、地域の雇用、働く場所はしっかりと守り抜いていくため、リーマン・ショック時を上回る、かつてない規模の経済対策を実施いたします。

新型コロナウイルス感染症に係る医療提供体制の整備についてお尋ねがありました。まず、今般の新型コロナウイルス感染症に対して、最前線で診療、治療に当たってくださっている医療従事者の皆さんには心から感謝申し上げます。こうした献身的な努力にもかかわらず、医療現場の皆さんに対して差別が行われるようなことはあってはなりません。そのため、国民の皆様お一人お一人が、感染症の基本的な知識や感染予防策などを正しく理解することが極めて重要です。御指摘の負の連鎖を断ち切るためにも、まずは、政府として、国民の皆様への丁寧かつ正確な情報について、引き続きしっかりと周知してまいります。

また、感染拡大防止と同時に、国内で患者数が大幅に増えたときに備え、重症者対策を中心として医療提供体制を強化することは喫緊の課題です。現在、感染症指定医療機関の病床を最大限動員し、二万五千床を超える病床を確保しております。

また、重症者の治療に必要となる人工呼吸器についても、現時点で八千個を超える台数を確保しているところであり、引き続き、三月二十八日に決定した基本的対処方針に基づき、感染者の急増に備え、重症者への医療に重点を置く医療提供体制の整備を加速してまいります。

加えて、基本的対処方針においては、患者が増加し、重症者等に対する入院医療の提供に支障を来すおそれがある場合には、入院治療が必要ない軽症者等は自宅療養とし、その際、家族構成等から高齢者や基礎疾患を有する者等への感染のおそれがある場合には、地方公共団体は、軽症者が宿泊施設等での療養を行うなど、家族内感染のリスクを下げるための取組を講じることとしております。来週取りまとめる緊急経済対策においては、第一の柱として重症者への医療に重点を置く医療提供体制の整備を強力に支援してまいります。

さらに、マスクを始めとする感染症防護具や消毒液については、国内企業に対して、国内生産体制の強化や輸入の拡大を働きかけてきたところですが、全国の医療機関に必要な量を確保できるよう、更なる増産を支援するなどの取組を進めてまいります。  緊急経済対策についてお尋ねがありました。議員御指摘のとおり、今般の新型コロナウイルス感染症の経済への甚大な影響に対しては、そのマグニチュードに見合うだけの強大な経済対策を実施していく考えであります。世界の協調をリードする我が国としては、リーマン・ショック時の経済対策を上回る、かつてない規模の対策を来週に取りまとめたいと考えています。

感染拡大の防止が最優先となる現状では、まず、この難局を乗り切っていただくため、大胆な資金繰り支援を実施するとともに、新しい給付金制度を用意し、これまでにない規模で、前例のない中小・小規模事業者支援を実施いたします。あわせて、生活に困っている世帯に対しても、生活維持のために必要な資金を迅速に交付する新しい給付金制度を創設します。さらに、感染拡大が抑制された段階を見据え、甚大な影響を受けている観光業等を対象として短期集中で大胆な需要喚起策を講じるとともに、このピンチを未来に向けた中長期的な視点の社会変革の契機としていくべく、デジタル化、リモート化のための環境整備をスピード感を持って強力に推進してまいります。そうした決意で、前例にとらわれることなく、財政、金融、税制を総動員して思い切った措置を講じることで、日本経済をV字回復させてまいります。

サプライチェーンの在り方についてお尋ねがありました。経済のグローバル化により、国際的な価格競争力に乏しい製品や部素材については生産の海外移転が進んだ結果、マスクや防護服など医療現場に欠かせない製品も海外への依存度が極めて高くなり、今般の新型コロナウイルス感染症の世界的な拡大に伴い、中国などからの供給量が大きく減少いたしました。また、海外からの部素材供給が止まったため、自動車産業などでは組立て工場の休止を余儀なくされるなど、サプライチェーンに大きな支障が生じました。経済、保健衛生、安全保障など幅広い観点から必要とされる製品や部素材については、単なる価格競争力だけで左右されない安定的な供給体制を構築することが必要です。マスクについては、既にこれまでの緊急対応策により、国内の生産設備投資への支援を行うなど国内生産力の増強を行ってきたところですが、来週取りまとめる緊急経済対策でも、生産拠点の国内回帰に加え、一か国だけに依存しない多元的な供給体制の構築を支援することにより、強靱なサプライチェーン構築に取り組んでまいります。

来年に延期された東京大会についてお尋ねがありました。東京大会については、私とIOCバッハ会長との電話会談において、私から、アスリートのことを第一に考え、おおむね一年程度の延期を提案し、その後、開催関係者間における協議を経て、来年の七月二十三日からの開催が決定されたところです。こうした方針に対し、G20首脳を始めとした国際社会や競技団体からも評価を得ているところです。東京大会の延期に伴い、例えば、競技会場の確保やボランティアを含めたスタッフの確保等の課題に対し適切に対応していくとともに、人類が新型コロナウイルス感染症に打ちかったあかしとして東京大会の完全な形での実施に向けて、国際社会とともに治療薬やワクチンの開発に全力を挙げて取り組んでまいります。  政府としては、世界のアスリートが万全のコンディションでプレーを行い、観客の皆さんにとっても安心で安全な大会を目指し、今後とも、IOC、大会組織委員会、東京都等との緊密な連携の下、開催国としての責任をしっかりと果たしてまいります。(拍手)


 

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