石田まさひろ政策研究会

 

令和2年診療報酬改定に関して(1)

来年の診療報酬改定について、中医協での議論の第1ラウンドが終わりました。
その概要(以下、概要)が公表されていますが、その中からいくつかの論点を確認してみましょう。
https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/000531114.pdf

やはり関心が高いのは、働き方改革との関係だと思います。

医療機関内については、概要によると

(論点)
○医療機関の、院内での労務管理や労働環境の改善のマネジメントシステムの在り方についてどう考えるか。
○これまで診療報酬で対応している、勤務環境改善に資する取組みや、算定の要件として求めている業務内容について、働き方改革の方向性や医療の質を確保する観点等を踏まえながら、どう考えるか。

に対して、

○働き方改革により医療従事者の勤務体系が変わり、人件費等の増加が見込まれるため、入院基本料の在り方を検討する必要があるのではないか。
○入院基本料の議論を行う前に、非効率な医療がないか検証する必要があるのではないか。

○医師の働き方改革に取り組むことは、医療を受ける患者・国民の医療安全に資するものであり、それを支えるためには一定財源が必要である。
○医師の働き方改革に伴って追加的に生じるコストを患者が負担することについては非常に違和感を覚える。

という対立した意見があります。

現在の医師や看護師の働き方からすれば、改革を進めるためには合理化だけでは無理なレベルで、いずれかの人員の増加等が必要。そのためのコスト増は避けられません。
患者一人当たりの医師や看護師数の国際比較をみてもわかりますが、そもそも今の日本の病院の医療が、医療者の無理に依存した低コスト構造になっており、「追加的に生じるコスト」ではなく、「今まで払っていなかったコスト」と考えるべきではないでしょうか。

看護職員の夜勤についてはこのような対立意見がでています。

○看護職員の仕事に対する多様性を受け入れる環境をつくるためには、現在の月平均夜勤時間72時間要件や2人夜勤体制について、働き方改革の観点から、柔軟なやり方を検討する必要があるのではないか。
○患者への安全な医療を提供しつつ、働き方改革の推進・看護職員の健康管理を適切に行う観点から、月平均夜勤時間72時間要件については、継続していく必要があるのではないか。

働き方改革の観点からは、緩和するのは明らかに逆方向。「人が足りないから無理はしかたない」という考えをやめようというのが働き方改革です。
僕のサイトに、消灯時間を廃止して状況改善させた病院の事例の話を載せていますが、むしろ交代制のあり方とか、インターバルの規制だとか、前向きな議論をして欲しいです。

○書類作成、研修の受講、会議への参加等の診療以外の業務負担や事務作業について、ICT等も活用しながら、更なる効率化と合理化について検討する必要があるのではないか。

これは当然やるべき。看護で言えばベッドサイド以外の業務を実質減らしていくかが今回の診療報酬改定の大きなテーマだと考えています。
むしろ効率化とか合理化という言葉では突き抜け感がない。今の現場の実情を考えると「削減」とはっきりさせるべきです。

○医師事務作業補助体制加算について、中小規模の病院が施設基準を満たしにくいという状況について検討する必要があるのではないか。

医師だけでなく看護職員にも事務補助が必要です。病棟クラークを独自で配置して勤務がスムースにいっている病棟をいくつかみたことがあります。
現実には、全体的な人手不足の中、クラークもなかなか集まらないとの声は多いです。しかし少しでも働き方改革改革を進めるためには、加算の対象を広げ、さらに要件緩和もすべきです。

○専従の医師、看護師等の配置要件については、医療提供の質の確保に配慮しつつ、より弾力的な運用が可能となるような見直しについて検討する必要があるのではないか。
○人員配置の合理化については、医療の質の確保を前提として、項目一つずつについて慎重に議論を行う必要があるのではないか。また、労働条件の悪化につながるような緩和は慎重に検討する必要があるのではないか。

いわゆる専従とか専任のルールの課題です。質の維持は前提です。その上で、前回の診療報酬で緩和したICUでのトイレ問題のような非現実的な縛りはなくすべきですし、短時間職員の組み合わせも進めるのが働き方改革の方向性でもあります。前回の改定をさらに進める感じかと思います。

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